抽出方法の大切さ

健康食品を製造する際に、原材料の選択が大切なのはいうまでもありません。

EPAやDHAのサプリメントには、魚油が用いられるのが一般的ですが、海洋汚染によって原材料となる魚が汚染されている可能性があり、キノコや薬草などを原料にする場合は農薬に注意を払う必要がありますし、漢方で用いる方剤の原料は、同じ種類の生薬であっても、原産地や採取された季節などによって、成分が変化するため、薬理作用に大変なバラツキが出ますから、そういった要素も原材料選択の重要な要素となります。

そして、折角良質な材料が揃っても抽出方法に問題があると、作り出される製品の品質が台無しになってしまいます。

そこで本項では、この抽出方法について問題提起し、皆さんと一緒に勉強してみたいと思います。

■単離抽出の問題点

1803年にドイツでアヘンからモルヒネだけを抽出する実験が成功したのを皮切りに、その後はあらゆる生薬から、単独の有効成分を分離して探し出すという研究が薬理学の至上課題となりました。

まもなくコーヒーからカフェインが、タバコからニコチンが、キナの木からキニーネが抽出されるという風に、多くの成分が抽出研究されるようになりました。

当初研究者は、生薬をそのまま用いるよりも、単独の純粋な成分を用いる方が、高い薬理効果が得られると考え、その考えの基に実験が繰り返されたのですが、結果は散々なもので、多くの単離抽出物には生薬にはない重大な副作用が見られたのです。

それらの失敗を経て、研究者達が気付いたことは、一見不活性なものと思われ、無意味なものとして切り捨られていた他の含有成分の働きこそが大切なのではないかと言う事実でした。

今日の薬学界では常識である事実も、実は多くの失敗の上に発見されたものだったのです。

この現象のメカニズムもまだまだ解明されたわけではないのですが、ある成分は他の成分と協調し、全体のバランスが保たれていないと本来の望ましい効果を発揮せず、副作用などの害が出るというだけ覚えておいてください。

非常に面白いことですが、薬の乱用でキニーネに耐性を持ってしまったマラリア原虫によるマラリア熱にでも、キナの樹皮をそのまま使って投与した場合、効果があるという事実があります。

有効成分だけを分離・精製してバージョンアップしたはずの薬が効かないのに、原始的な天然物を使うと効果があるということは、全体の成分の相互作用の大切さを痛感させられるばかりか、我々人間の智恵が所詮は浅はかなものであることを教えてくれます。

医薬品というと難しく感じますが、精製した白砂糖の害を知っている人は、この単離抽出の問題点がよく理解できることと思います。

恐らく、最近言われだしたイソフラボンの有害性も天然の食品から摂る場合には問題とならず、単体の成分をサプリメントなどの形で大量に摂取した場合にのみ害作用を現すのでしょう。

ここで改めて食養生でいう「一物全体」の大切さが思い出されます。

■昨今の健康食品の抽出方法

単離抽出の問題点を理解できた方は、「では自然の原材料をそのまま食べれば良いのだな」と思うかもしれませんが、ちょっと待っていただきたいのです。

天然物に含まれるそれぞれの成分は、主に糖質や脂質、タンパク質などと結合した状態で存在するため、そのまま摂取しても、ほとんど吸収されず、本来持っているはずの素晴らしい働きはそれほど期待できないのです。

例えば、イソフラボンは天然ではほとんどが糖と結合した配糖体(グリコシド)の状態で存在し、結合している糖質が体内での吸収を妨げ、これが腸内で加水分解されて、ようやく吸収される「アグリコン」という形になるのですが、この加水分解は摂取した人の腸内細菌の状態によって差ができるために、吸収率にも大きな差となって現れてしまいます。

ただでさえ、グリコシド型のものは吸収率が非常に低いにも関わらず、現代人は腸内環境が劣悪化しているために、このタイプで抽出・製造された健康食品を摂取してもあまり効果がないのです。

そこで、それらを解決するために出てきたのがアグリコン型の抽出方法です。

■アグリコン型での抽出方法とその限界

このタイプの抽出方法は、比較的新しい技術であり、まだそれほど多くは用いられていませんが、主に麹菌などが行う「発酵」を生かして、予め分子の重合を切断してしまう技術で、かなりピュアな形で成分が抽出されてくる為に、グリコシド型のものに比べて、際立った吸収率を誇ります。

しかし、この抽出法は優れたものではありますが、発酵菌によって働きが違うために、一素材の有する成分を全て切れている訳ではないので、重合が切れなかった成分は本来の働きを発揮しないまま残ります。

それを摂取した場合、またそこで吸収率に個体差が生じてしまうことになるのです。

この点でまだまだ抽出法に関する技術は発展途上にあるといえるでしょう。

2007/03/11

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