易経講話 公田連太郎 著

統合医学を扱うHPで易経の解説書をオススメ本として紹介するのは、奇異な感じを与えるかもしれませんが、奇を衒うつもりは毛頭ありません。

今回、易経の本を取り上げるのは、易経と東洋医学とは密接な関係にあり、本当に東洋医学を究めようと思うなら、易経に熟達するのは必須ですし、これから漢方や鍼灸のような東洋医学を学ぼうとするのにも、易経をベースに持っていれば習得が早くなると考えるからです。

例えば『傷寒論』(漢方医学の原典)は、炎帝神農氏の本草学と、黄帝軒轅氏の医学と、太昊伏義氏の易経の三つの学問を基礎として成立しており、用語にも易経由来の言葉が少なくありません。

また、本草学や医学は医薬学の範疇にしか入りませんが、易経は東洋の思想全般に著しい影響を与えていますので、広く東洋学を勉強する上でも避けて通れません。

“占いなんて信じない”という人も心配御無用、公田連太郎先生(1874〜1963年)の『易経講話』なら問題なく読み進む事が出来るでしょう。

易経は、其の成立した時代においては、専ら占いのテクストとして扱われていたと考えられていますが、孔子の時代辺りから哲学書思想書として捉える見方が出てきて、公田連太郎先生の学風も占いではなく哲学書として捉える系統のものなのです。

公田先生は、孤高の儒学者根本羽嶽先生(1822〜1906年)の門弟で、其の学識の深さは尋常な水準ではなく、本書『易経講話』は、あの陽明学の泰斗安岡正篤先生をして「初学の人が易経を読むのには公田連太郎氏の易経講話五巻が最も懇切丁寧である」と言わしめた程のものですが、文体は講話ならではの平易なものであり、初学者でも一読スラスラ理解できるはずです。

しかし、其の解説は微に入り細を穿つもので、並みの易経解説書とは格の違いを感じさせるに十分なものです。

戦後の易経の解説書では、朝日選書にも入った本田済先生の『易経』が恐らく最も世評の高いものですが、私は公田先生の本のほうが断然好きです。

この本を繰り返し読めば、学問の奥深さというものまで味わうことが出来るに違いありません。

しかし、問題はこの本の値段とボリュームで、現定価6万3000円の3000ページ…安岡先生のノリでなければとても初学者には勧められません・・・

2007/06/09

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