胎児の複合汚染 森千里 著

ダイオキシンをはじめとする環境ホルモン等の微量化学物質が胎児に与える影響を論じた啓蒙書。

若干専門的で難しい用語が頻出しますが、理系の著者の割には、文章は中々の名文で読みやすいものだと思います。

環境ホルモンの毒性を恐るるに足らぬものであるとする研究者も少なくありませんが、本書はそれらに対する反論もしっかり述べられており、改めて環境ホルモンの危険性について考えさせられます。

ところで、目下のところ、環境ホルモンが人間に対して、害を与えた決定的な報告や証拠は見つかっていませんが、それらの微量化学物質の人体への有害性を証明するのが困難なだけであり、実際には至る所で、それらの害は出てきていると医学統合研究会では考えています。

飲んだ水が一分後には脳と生殖器に届くことはすでに述べたとおりですが、環境ホルモンも特に脳と生殖器に影響を与えます。

それが、今日増加する老人の認知症や不妊症の因子の一つになっているようです。

また、所詮は極めて微量にしか存在しない環境ホルモンが人体に害を与えるはずはないとする研究者も少なからずいますが、希釈によって本来は薬効を発揮しない濃度であるはずのホメオパシー薬の作用原理に未だに明確な説明がなされていない現状を考えれば、「微量である」=「無害」とはならないのではないでしょうか?

検出技術の進展によって更なる微小な有害物質が検出される可能性も否定できませんし、個々の物質が組み合わさったときに起こる相乗毒性の研究もまだまだ発展途上にあることを考えると、今すぐに環境ホルモンが人間に有害であることを証明できないからといって、すぐに「安全」だの「無害」だのと決め付けてしまうのは如何なものでしょうか?

さらに、本書でも述べられているように、一般の毒物の安全基準は成人をその対象として考えられており、遥かに繊細で弱い胎児を基準には考えていないのです。

胎児から多くの化学物質が検出されるのは今日では常識なのですから、環境ホルモン問題も胎児に与える影響に焦点を当てて研究して欲しいものです。

本書は中公新書の入っており、入手も簡単です。

一般の方も環境ホルモンの入門書としてお読みくだされば幸いです。

2007/06/12

トップへ