波動!と波動?

健康関連産業の一角を占める一大勢力に「波動ビジネス」というものがあって、商品もバイブル本もかなりの数に上ります。

また、波動医学や波動測定という言葉も既に人口に膾炙したものかもしれません。

この分野はオカルトの温床で、異常な商品と奇天烈な理論と危険な人々が渾然一体となった極めて際どいジャンルであるといっても過言ではないでしょう。

SF作家山本弘氏率いる「と学会」においても「波動の文字があればオカルトと思え」とされている位、オカルチックなのです。

もっとも、物理学とくに量子力学において扱われる「波動」という分野があり、これはオカルトでも何でもないマトモな学問領域です。

皆さんに知って頂きたいことは、量子力学における「波動」と、波動医学や波動測定の「波動」とは、基本的に“別物”であるということです。

この辺りは、「マイナスイオン」と似ているかもしれません。

困ったことですが、波動医学や波動測定に携わっている人々に理科の知識が恐ろしく欠落している為に、当の本人達までもがゴッチャにしているのが現状なのです。

量子力学における「波動」とは、原子や素粒子の振る舞いを記述するための波動方程式と呼ばれる微分方程式を扱うもので、その方程式を解くと複素数が出てくるという数学に疎い人にはちょっとよく理解し難いものです。

しかし、オカルト扱いされている波動は、本来「振動」と訳されるべきもので、周波数で捉えるものとされています。

量子力学における波動は、英語では「wave」つまり“波”という表現が使われていますが、波動医学に関する英語の文献では「vibration」であって、文字通りの「振動」として表現されているのです。

この別個の事象に対して、同じ訳語を当てはめたのがそもそもの間違いで、ここに気付かない人が波動医学の分野に沢山いることが、事態をややこしくしています。

この波動医学が台頭してきたのは、20世紀のはじめで、米国の医師アルバート・エイブラムス(1865-1924)が独自に開発した治療器「ラジオニクス」が、波動医学分野の先駆的存在のようです(今でもオカルト医療機器の総称としてラジオニクスという名前が用いられることがあります)。

わが国にも昔から波動医学の分野がありましたが(大正期の霊術運動もこの範疇でしょう)、近年の波動ブームの火付け役となったのは、やはり江本勝氏でしょう。

オカルト同然の“波動”ですが、私は全てがインチキであるとは思っていません。基本的な部分に誤解の多い分野ではありますが、いわゆる波動治療器の類で、奇蹟的な治癒が起こった事例は身近で少なからず見聞きしています。

しかし、ここで一つ注意しておかなくてはならないのは、この分野の波動は“意識”という視点を欠いた、客観性のみを求める現代科学では基本的に扱うことのできないものであるという点です。

江本氏が紹介して普及した感のある波動測定器「MRA(Magnetic Resonance Analyzer)」は一頃、科学者によって調べられ、構造的には嘘発見器のような原理であることが判明し、一躍オカルト機器の代表格のような扱いを受けることになりましたが、これは装置を操作する人間の職人芸的感覚に頼った装置であり、誰が扱っても正確な測定ができるようなものではないのです。

ですから、私自身見聞きしたような治癒例が、すべて同じ構造の装置で再現できるという訳にはいかないのが実際のところでしょう。

気になるのは、波動測定に関わる人々の態度で、何でもかんでも波動測定によって導き出された数字によって、物の善し悪しを判断しようとする傾向は非常に危険なものを感じさせます。

彼等は、現代科学や正統派医学に極めて批判的ですが、結局は自分達も盲目的に波動測定を信仰しているだけであるという事実には全く気が付いていないようです。

客観的な数値が弾き出されるものならまだしも、一つ間違えば測定者に振り回される危険を内包している訳ですから、“波動”に頼り切ることは大変な危険を孕んでいると知るべきでありましょう。

2007/04/17

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