“上品”は上品に!

中国最古の本草書に『神農本草経』というものがあり、この書物が源流となって後の湯液療法、すなわち漢方医学が発達して来る訳ですが、この辺りの事情は『傷寒論』の序文にも、記されています。

“本草”という言葉から、薬草図鑑のようなものを想像してしまうかもしれませんが、実際には、動物性のものから鉱物まで、薬の原料となるものを広く扱った内容であり、記載事項は薬用植物に限定されたものではありません。

この書物の中では、記載物を上品(120種)、中品(120種)、下品(125種)の三つに分類してあり、“上品”とは、一生涯服用し続けても、副作用は無く、軽身延命(寿命を延ばし、体を軽くする)の働きがある養命薬であり、現代で言えばサプリメントなどの栄養補助食品がこれに当ります。

また、“中品”とは、体調を崩した時に服用することで回復させる作用を持つものの、回復後も服用を継続すると、反対の害を生ずることもあるとして警告がなされているものです。これは薬局などで扱っている比較的薬害の起こりにくい市販薬のようなものと言えるでしょうか。

“下品”とは、毒をもって毒を制する類の純粋な治療薬で、その疾病を標的にした劇薬であり、現代で言えば医師の監督下で扱われるべき薬になります。

この三種の分類(じょうほん・ちゅうほん・げほん、という読みが正しいそうです)は言葉の上では、上品がもっとも優れたもので、下品は文字通り劣ったもののような印象を受けますが、そうではありません。

摂取する人の健康状態や病状によって、上品が適当な場合もあれば、中品を用いるべき場合、また下品でなければ対処できないような状態も考えられる訳で、生薬の優劣を羅列したような書物ではなく、あくまで薬の性質を三種に分類することで、実際の治療に応用し易くしたものと言えます。

使い分けこそが大切である訳です。

しかし、売り上げ至上主義の健康食品業界では、この“上品”すなわち健康食品こそが上位概念に属するものであるとして、その摂取こそが健康維持にも疾病治癒にも不可欠なものであるとし、盛んに古典に見える言葉を捻じ曲げて、販売文句に巧みに取り込んでいるようで、この辺りは先述の“医食同源”と同じでありましょう。

それにしても、よくよく考えてみますと、“上品”の何と“下品”な売り方でしょうか。

“飲んだ!効いた!治った!”の三拍子しかない広告チラシと、ほとんど洗脳同然の営業活動と、健康や病気をネタに脅迫マガイのやり方で販路拡大を図っているような健康食品業界を見るに付け、おおよそ“上品”に分類される品物を扱うには相応しくないものを感じてしまいます。

扱う品物が、人間の健康に関わるものであり、健常者は兎も角、様々な疾病を抱えておられる人にとっては単なる食品とは違う重要な意味を持つものであるわけですから、せめて売り手は上品な誠意ある対応をして上げなくてはなりません。

買い手に誠意ある対応をすることは物売りならば当然認識していて然るべき商道徳ですが、何故かこの健康業界は、それが忘れさられる傾向にあります。

私が思うに、問題なのはその商品の良し悪しではなく、何の知識もない素人丸出しの人が販売している事です。

その手のHPなどを見ても、意味不明な記述が満載で、書き手の理科系知識の貧困が露骨に出てしまっているものがほとんどで、これなどは末端の販売員以前に、教育を行うべき上層部までが際立って粗雑な知識しか有していないことの証拠に他なりません。

何よりも、人様に健康に関する商品やエクササイズを提供しようとするならば、日々の研鑽(セールのスキルではなく)を欠かす事は出来ないでしょう。

それは荒唐無稽な理論で無知な大衆を煙に撒くことではなく、教科書レベルの知識から出発して、学問を深めることです。

それでこそ、“販社の品格”も出てくるというもの!

“上品(じょうほん)”は“上品(じょうひん)”に!!

2007/03/08

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