健康食品の問題点

「健康食品」といっても明確な定義があるわけではありません。

「特定保健用食品」という言葉はありますが、法的には「健康食品」という定義は存在せず、審査も試験もいらずに販売できることから、業者が「健康に良い」という雰囲気を醸し出すためだけに「健康」という枕詞をおいて、「食品」を販売している場合が少なくないため、市場に流通しているサプリメントは、まさに玉石混交なのが現状です。

法的には「効果」「効能」を謳うと薬事法違反に問われるのは周知の事実ですが、当研究会でも様々な議題が上る中で、確かに有効な健康食品が少なからず存在するということでは意見が一致しておりますから、それを前提に話を進めます。

しかし、まずはあえて問題点を考えてみましょう。

健康食品メーカーが発行している商品紹介のパンフレットの紙面は「治った!治った!」という体験談で溢れていて、時にそこには満面の笑みをたたえて感謝する体験者の写真が載っているのを目にしますが、これらを見て気になるのは、医師の治験報告ではなく患者の「体験談」をもとに販売を行っているという点です。

商品を勧められる側は、それら体験談以外には、効果を判定するための臨床試験などが行われていないために、本当に効能があるのか判定できません。

医薬品の世界では、心理上の効果によって治癒が起きる「プラシーボ反応」という現象が存在するために、ある人に効果があったものが、別の人にも同じように効果があるとは言い切れませんから、必ず偽薬を用いた「二重盲検法」という厳密な臨床試験が行われます。

二重盲検法では、与える側の思い込みによって正確なデータが取れなくなるのを防ぐために、薬を与えられる患者も、それを与える側もどちらがが本物の薬なのか知りません。

二重盲検法登場以前に行われていた一重盲検法では、薬を与える側は、どちらが本物の薬なのかを知っているという試験です。

大体、偽薬(ただのビタミン剤等)を用いても二割位に症状の治癒や回復など、望ましい反応が得られるために、対照群に明らかな有意差が認められない場合は薬理作用は無しと判定され、医薬品としての認可はおりません。

ここで注目すべきは、無作為に選ばれた人にでも何割かには効果が認められるという点です。

したがって、自分の良く知っている人(嘘をつく筈がない)が何らかの健康食品で「劇的な効果があった」と言っていても、必ずしも当てにはならないと言うことなのです。

二重盲検法ですら二割の人に効果があるのですから、一重盲検法すら経ていない健康食品では本当のところはどうなのかさっぱり分かりません。

多くのメーカーの宣伝は、逸話の域を出ない体験談と一見科学的な装いをしてはいるものの、結局は我田引水的な実験結果(大抵外国の○○博士による報告)の羅列に終始しているという感は否めません。

実際に自分で試してみて良い手ごたえを感じた場合でも、進行性の病気は別として、慢性病の場合は波があるので、たまたま悪い時期に飲めば必ず良くなったように見えるため、悪い時に飲んで良くなったら効果あり、そしてさらに悪化したら瞑眩と思ってしまうということもあります。

しばしば、一見専門家による研究所のような装いで○○研究会や○○研究所などという名前の団体がありますが、住所がメーカーと同じだったり、科学的な研究は全く行われておらず、どうせなら○○同好会や○○愛好会、あるいは販売手法研究会とでも命名して欲しいような場合も少なくありません。

兎に角、個々の“治った”という事実の集積によってしか説得力を出せないのは問題です。

例えば「100人の奇蹟的治癒例」が本当にあったら凄いと思うでしょう?

しかし、それが1億人に摂取された内の100人だったら、率としては100万人に1人という、まさに“奇蹟”になってしまいます。

批判する人が用いる“奇蹟は一度しか起こらないから奇蹟”というのはあながち的外れではありません。

また、たまたま併用していた他の療法が効いていた場合に、そのサプリメントによる治癒なのか中々判別できません。

バチカンでは、ある治癒例を“奇蹟”と認定するためには、他に一切の治療法を受けていないことが最低条件になるそうですが、確かにそれくらい“奇蹟”の認定は難しいのかもしれません。

ある健康食品が他の治療法に補完的役割を果たしたなら非常に結構なことですが、しかしそれだけで治ったと錯覚したら困ったものですし、そういう人が集まって徒党を組んだとき、言葉は悪いですが「野蛮」になります。

この種の運動には粗野で野卑な大衆運動の匂いが漂っています。

以上、本当に良い健康食品もたくさんあるのですが、気休め以外になんの役にも立たず、時には有害で、時に奇怪ですらある理論を伴ったものが少なからず出回っていることに警鐘を鳴らしたかったので、少し厳しく書いてみました。

2007/03/03

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