呼吸法の危険性

インドのヨーガや、中国の仙道、更には、そこから派生した様々なものを含めて、世界には数多くの呼吸法の流派があります。

わが国でも、特に明治〜昭和初期の霊術ブーム時代を中心に、種々の呼吸法の指導者が登場し、岡田式、藤田式、二木式をはじめ、百花繚乱の様相を呈していました。

比較的新しいものとして、西野バレエ団の西野皓三氏が創始した西野流呼吸法は、実践者も多く有名なものですし、スポーツや格闘技の世界で盛んに取り入れられた「火の呼吸」も雑誌や書籍で頻繁に紹介されています。

精神修養を目的として行われる場合から、火の呼吸のように運動能力向上を目的としたもの、痩身効果を狙って行われるもの、潜在能力開発法の一環として位置づけられるもの等、その目的も非常に多岐に亘っていて、その分かなりの数の実践者がいるものと思われます。

しかし、呼吸法の様々な効果・効能については否定しませんが、何の素養もない一般の人々が効能書きを鵜呑みにして安易に実践するならば、少なからず問題が起きるであろうということは当然考慮されて然るべきだと思いますが、不思議なことに、そのような警鐘を鳴らす専門家は余り多くはないようです。

さて、「呼吸」と聞いて、普通の人は「肺」とか「横隔膜」などを連想すると思いますが、実際にはそれは背骨を中心に全身が連動して行われるものなのです。

ですから、元々背骨に歪みを抱えている場合や、間違った姿勢で呼吸法を実践した場合、問題箇所に過剰な負担を掛けることになるのです。

岡田虎二郎をはじめとして、呼吸法で一家を成した人物には案外短命の人が多いのですが、それらの事例も呼吸法がはらむ問題点の結果と考えられなくもありません。

インドの修行法では、ハタ・ヨーガから、呼吸法(プラーナヤーマ)、そして瞑想法(ラージャヨーガ)という風に段階を追って修行を深めていきますが、呼吸法の前段階としてのハタヨーガが重視されるのは、「体を整える」という必要性があるからです。

また、瞑想法の段階においても体が整った状態にないと、長時間座り続けることが出来ませんし、瞑想を深めていくことも困難になるからです。

ヨーガのように体系の中に呼吸法が組み込まれている場合、そして、しっかりとした指導者の下で実践する場合は、比較的危険性も少ないのでしょうが、巷で行われている呼吸法の多くが「整体」という前段階を欠いている為に、脊髄や、それに関連している各臓器に負担を掛けている事例が多いように見受けられます。

ヨーガに限らず、実践の際は何らかの体を調整する技法を併用すべきであると言えるでしょう。

また、もう一つの問題として過呼吸の問題が挙げられます。

火の呼吸法などは別にして、ほとんどの呼吸法は非日常的なレベルでの長い呼吸をすることが基本になっています。

それらが、脊椎に負担を掛けることは前述の通りですが、過剰に長く呼吸するということは、必要以上の空気を取り入れることであり、体内に多くの活性酸素を作り出す結果にもなります。

また、このような無理な呼吸法に、クンバカ(止息)という要素が加わると、身体への負担は更に倍加します。

修行上必要な或る種の意識状態を目指す為のものは別として、健康法として呼吸の操作を行う場合、呼吸法を中心にしたカリキュラムを立てるべきではないと思います

一般の人が行う場合、まずは整体を行い、その後で呼吸法を実践すべきであり、その呼吸法は、平素の呼吸を深めるのに役立つようなものでないといけません。

2007/04/25

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