MLMと健康食品

ネットワークビジネス(MLM)で扱う製品は、浄水器から下着に至るまで様々なものがありますが、やはり主流は健康食品でしょう。

私はこれらの会社が主催するセミナーに参加したこともありますし、たまたまセミナーが行われている会議室を覗いたこともありますが(公的な施設の安い会議室では、たいていこの手のセミナーが開かれています)、驚いたのは製品の良さを説明するのに使われる理論が少しばかりの医学知識しか持っていない浅学非才の徒である私にさえ、明らかな科学的間違いや嘘で満ち満ちていたことです(モルキュラーなんていう架空の単位まででっち上げているところもありました)。

そんな中学レベルの理科の知識すら危うい人が、スピーカーとして前に立って数十人の人の面前で自信満々に話しているのも驚きましたが(ある意味才能ですね)、そんな非常識な話を只管頷きながら聞き入っている人が大勢いることにも驚きました(さくらだったのかな?)。

熱心に活動しているディストリビューターの方々は「身内のガンが治った」とか「子供のアトピーが治った」とか言っていましたが(すべてが嘘ではないと思いますが)、こんな奇怪な話をすんなり信じ込める人が飲めば、単なるビタミン剤でもガンであろうとプラシーボ反応で朝飯前のように治ってしまうのかもしれません。

余談ですが、以前野口整体を習得している人に体を診てもらったことがあります。

野口整体は野口晴哉先生が独自に体系化した「体癖」という考え方を中心とする整体法の一派で、その体癖は12種類(生まれつきのものです)に分類されているのですが、自分が何種であるのか知りたかったので、その治療家の方に聞いてみると、「主に1種」との答えを頂きました。

さっそく家に帰って全生社から出ている野口先生の著書『体癖』を読んでみると、1種体癖とは、上下型で、歯磨き粉を飲ませても病気を治すことができる、という旨の何やら屈辱的な記述がありました。

野口先生の時代の歯磨き粉は現在とは全然別のもので、ライオンの歯磨き粉を飲ませても病気を治せるとは思えませんが、それはさて置き、ネットワークビジネスにハマっている人というのは、もしかしたら、この1種体癖の持ち主なのでは?と勘ぐってしまいました。

MLMだけでなく、みのもんたの信者も似た様なものでしょう。

よく、ネットワークビジネスの世界では「口コミだけで販売しているので、宣伝費などの余計な経費が製品の価格に反映されないため、安価で高品質」というフレーズを耳にしますが、ここに重大な欠点があることに気付かなければなりません。

専門的知識を持たない一般の人(多くは主婦)が、製品の品質を正確に把握するのは不可能ですし、理科系の知識は基礎からの着実な積み重ねの上に成立しているために、病気や健康と製品のかかわりにおける理論的背景を正しく理解するのも困難です。

また、ネットワークビジネスの会員さんはある種の集団催眠に掛かったような状態になっていることが多く(研修と称して、そのような集まりに参加させられることがあります)、製品や理論に批判的な意見が来ようものなら、ジハードの名の下に殉教しかねない危ない雰囲気が漂っているのも心配な所です。

会員さんは驚くべきことに、専門医がさじを投げた、現代医学では治せないような重篤な病気が、自分たちが扱う製品で治癒すると豪語しますが、一部の偶然を除き、何の医学知識も持たない人が薦めるサプリメントでそんな重篤な病気が治るとは思えません。

集団催眠状態にある彼らは自信満々ですが、どう考えてもその自信は思い込みと勘違いの産物でしかないと思われます。

批判ついでに、あるMLM商法で耳にした勧誘文句をいくつか検証してみたいと思います。

△「ネットワークビジネスは“連鎖販売取引”という合法なビジネス形態であり、違法なネズミ講(無限連鎖講)ではない」

→ビジネス形態が合法であるかどうかは問題ではありません。

そもそも自分から「合法」を強調する辺り、虚しさが漂っていますが、合法でないビジネスなんて論外でしょう。

そういうのはヤクザにでも任せていればよいのです。

MLMも特定商取引法で連鎖販売として規制を受けているものであり、範囲内で法律を遵守している場合は合法ですが、薬事法などに触れるオーバートークでの勧誘を行った場合は、当然“違法”となります。

システムそのものが違法でなくとも、違法行為を誘発しやすい構造を内包しているという点ではやはりMLMには大きな問題があると思います。

△「ア○ウェイは10パーセント程度の吸収率で、ニュー○キンは20パーセントの体内吸収率しかありませんが、当社の製品は分子量を小さくしてあるので、100パーセントの吸収率を誇ります」

→本当に他社製品の吸収率を実験で確認したのか怪しい所ですが、分子量を変えるというのも凄い話で、100パーセントの吸収率というのもこれまた凄い話です。

分子量はそれぞれの物質につき決められているものですから、変化したとするとまったく別の物質になっていると考えられますし、100パーセント吸収というのは栄養の過剰摂取の害をまるでご存じないとしか言いようがありません。

ビタミンAなどは過剰摂取による害が報告されていますから、100パーセントの吸収率というのも本当だとすれば、よほど用量を厳密に扱わない限り危険でしょう。

△「医薬品と違い副作用は絶対にないものの、医薬品以上に効果があります」

→医薬品なみの厳正な試験を経ている訳ではなく、効果の程は怪しいところです。

また、当然ですが医薬品開発とは程遠い研究開発費で製作されているようです。

医薬品といわずとも、もうちょっとまともな試験なり、研究なりを行って欲しいところです。

それに対する反論にも答えは予め用意されているようで

「本当に病気が治って健康になれば、医者も製薬会社も失業するから、かならず圧力が掛かって潰されてしまう。だから口コミで伝えていくのだ」

という陰謀論を持ち出してきて、屈折心理のドミノ倒し的連続思考に唖然とさせられたことがありました。

実際には、本当に効果のある療法が医師法違反に問われて、消滅を余儀なくされた事例や、医薬品の認可が取り消された事例もあるので、一概には笑えない話ではありますが、とにかく屁理屈をこねたがるディストリビューターの態度は接していて不快でした。

△「このビジネスで健康もお金も時間も手に入り、“成功者”になれますよ」

→健康は兎も角として、この“成功”という響きからは何やら無目的に金を稼ごうという無節操な拝金主義の匂いを感じます。

私の周りにも、「月収一千万」を目標に私のような貧乏人には想像もつかないような収入を目指している人がいましたが、使い道は「海外旅行」だそうで、凡そ何らかの志があって、そのためにお金が必要、という気概はまるで感じられませんでした。

そもそも、どんな商売でも金がガバちょ〜んと儲かるのは一握りの人だけです。

「キャッシュバック的に製品がタダになる」というのも、組織が大きくなって飽和状態になれば、後から始めた人ほど利益を上げるのが困難になります。

上級のディストリビューターは不労所得で製品を購入できますが、ランクが下がっていくにしたがって、製品の購入も汗水たらしたお金でまかなわねばならなくなります。

成功を夢見て参入したものの、結局はお金も、信用も、友達も失う羽目になることが多いのですね…

流石にMLMの販売手法はセールステクニックとしては、製品の理論とは対照的に、非常に洗練された体系を持っていました。

「これから医療費が全額自己負担になる」

「合成洗剤を使うとガンになる」

などと、不安を煽って製品を薦めたり、前置きしての薬事法違反などなど…

確かにMLMというビジネスの形態上、人を集めるにはそのような宣伝が必要なのかもしれませんが、それをやっている限りトラブルは絶えないでしょう。

最近、障害者(聴覚障害者の方が多いらしい)の方が、MLMの被害にあう例が急増しているそうです(国民生活センター)。

どうやら、同じ障害を持つ人々同士の強い連帯感につけこんで、彼らの生活不安を煽りながら、忍び寄ってくるようですが、ハンディを持った人たちがお互いを助け合うために作った連帯を利用するとは絶対に許せません。

そんな不届千万な輩こそ、いっそのこと合成洗剤をガブノミしてアノ世に行って欲しいくらいです。

■製品は基本的には優秀

MLMの問題点についてかなり辛口に書いてきましたが、基本的に扱っている製品群は市販品よりも何らかの点で優れたものであるということを書いておかないと片手落ちになるでしょう。

原則として、MLMは口コミで拡がっていくため、一般に出回っている製品と同程度であったり、それ以下の品質であると、拡がりようが無いのです。

サプリメントや浄水器など、私が知る限りでも優れたものがいくつもあります。

しかし、普通「口コミ」というのは人の口から口へと伝わっていく伝言ゲームのようなものですから、介する人数が増えるほど話が大きくなっていくために、「優れたサプリメント」がいつの間にか「奇蹟の食品」に変わっていくのです。

健康食品は効果・効能を表記できない分、口コミで伝わるときには著しく医学の常識を逸脱した表現をとらざるを得ないという事情も少なからずあるのでしょう。

今日の健康業界は、一例報告的治効の集積によってしか説得力を出せない非科学的な経験主義が横行していますが、MLMの世界はその最たるものだと言えます。

人様を巻き込んで金を稼ごうなどと思わず、こつこつ働きましょう。

2007/03/06

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