食生活と身体の退化 ウェストン・プライス著

ウェストン・A・プライス博士の『食生活と身体の退化』は、知る人ぞ知る名著なのですが、著者が歯科医であったためか、日本での出版は自費出版で、購入が面倒であるからなのか、それとも専門家以外が読むには大部過ぎるからなのか、その価値程には知られていませんので、是非とも多くの方々に知って頂きたいと思い、このコーナーで取り上げる事にします。

本書『食生活と身体の退化』はアメリカの歯科医ウェストン・A・プライス博士が、主に1930年代に行った世界各地の綿密な調査に基づいた研究を纏めたもので、民俗学的資料としても大変優れた内容を持っています。

プライス博士が本書で展開している論旨の骨格は、文明と隔絶した未開の種族では、虫歯や歯列弓の異常が殆ど見られず、体格も非常に立派で、驚くほど体力があり、結核など当時の文明社会で広く見られた疾病の罹患率も極端に低いのに対して、一旦、文明社会の食生活が持ち込まれると、これらの民族もたちまち、歯に異常が見られるようになり、様々な退化病に見舞われ、死亡率が急激に上昇し、部族の存続さえ危うくなってくるという事実です。

また、その民族が文明と接触を持ち、先進的(?)食生活を取り入れるようになると、その世代以後酷い歯の異常が見られようになり、広く退化病が見られたのに対して、昔ながらの食生活を守り続けている年配の人たちは変わらず健康な生活を維持していることから、明らかにそれら退化病の原因が精白小麦や、白砂糖などを用いた近代的食生活にあることを、プライス博士は見出したのでした。

『食生活と身体の退化』を読んでいると、虫歯予防のための歯磨きの奨励がやや的外れなものであることも、歯並びが遺伝であるということにも違和感を覚えるようになります。

プライス博士が調査に乗り出した1930年代のアメリカでは、既に悪しき近代食による退化病が一般国民に拡がっていたことから、プライス博士は食事の大切さを訴えたのでした。

したがって、本書は食養法に携わる人々や有機農業に携わる人々の間では比較的知られているようです。

ここで注目に値するのは、プライス博士の観察によると、日本の食養家が敵視する動物性食品(内臓や乳製品を含む)を摂っている、というより食事の大部分を動物性食品が占めるような民族が非常に多く、日本的食養生では健康になどなれないはずの生活をしている人々が、大変に頑健であるという事実を博士が強調しており、「完全菜食」を明確に否定しているという点です。

頭の固い食養マニアには是非とも読んでいただきたい解毒剤的名著なのです。

本書は大阪府豊中市の歯科医、片山恒夫先生がご自身で訳され、1978年に自費出版されたものです。

片山先生が大変な愛情を以って訳されたことが、訳文から伝わってくるような明晰な文体で、翻訳書にありがちな雑なところは微塵もありません。

このような名著を長い年月をかけて訳され、自腹を切って出版された片山先生には本当に頭が下がります。

大手出版社の多くが、情報公害としか言いようのない駄本を垂れ流しているのに対して、これこそが本当の文化事業というに相応しいものではないでしょうか?

本書は現在も購入が可能です。

豊歯会刊行部 大阪府豊中市岡町北3-1-20 Tel&Fax 06-6852-0446

余談ですが、管理人がこの本を購入するため、豊歯会刊行部を訪れた際は、片山先生は体調を崩されて入院中であるとのことで、ご家族の方が応対してくださいましたが、それから2ヶ月ほどして亡くなられたことを知りました。

享年95歳

…合掌…

2007/05/20

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