食の陰陽について

「陰陽」は、食養や中医学に限らず、東洋思想の中核を為す考え方ですが、ここでは食について述べることにします。

陰性の食べ物とは体を冷やし、陽性の食べ物は体を温める働きがあるものと定義されていますが、食におけるこの陰陽の考え方は、身土不二や旬の考え方とセットになっていると言えるでしょう。

つまり、寒い地方では体を温める作物ができ、暖かい地方では逆に体を冷やす作物ができます。

また、冬には体を温める作物ができ、夏場には体を冷やす作用のある作物ができるというわけです。

食養法を疾病の治療、或いは補助手段として考える場合には、その人の体質が陰性なのか陽性なのかで、理想的な食事の内容が決まることになります。

そして、この食の陰陽の問題も身土不二の問題と当然重なってきます。

昔なら、収穫されたものをそのまま食べれば、身土不二であり、旬のものを食べることであり、陰陽の調節であったのが、今日のように貿易によって外国の食べ物が年中入って来るようになると、自らの頭で考えて食を選択せねばならなくなってしまいました。

ところで、日本の食養家の説くところの「陰陽」と伝統的東洋医学に拠って立つところの人々のいう「陰陽」とでは、反対の考え方になっていることをご存知の方はそう多くはないと思いますで、少し説明しておきたいと思います。

本来の東洋思想における「陰陽」というのは、文王と、その子周公が、伏羲のつくった「易経」を改良し、易の理論を完成させ(後天の易といいます)、これを一般に「易経」と呼んでいるのですが、わが国では、石塚左玄(1851〜1909)の提唱したカリウム・ナトリウム平衡理論を、マクロビオティックで知られる桜沢如一氏(1893〜1966)が、先天の易である伏羲の易を基に理論化したため、陰陽の解釈に矛盾が生じ、なんでも「陰性食品」「陽性食品」と一刀両断に分類する今日の風潮が始まり、混乱を招くことになりました。

また、陰陽食品一覧表を見さえすれば、誰でも一端の食養家になったような錯覚を覚えるために、急速に食べ物を陰陽で強引に分類する考え方が広まったということもあります(なんといってもこのような二元論は実践者にとって楽なのです)。

食品の陰陽分類表を妄信する食養家もどきの人達は、これを金科玉条の如くに扱いますが、実際には分類表通りに考えることは出来ません。

食材の産地によって性質に違いがあるように(生薬と考えるとわかりやすいですね)、人間も北方の人間なのか南方の人間なのかによって体質に違いがあります。

よく食養生の世界で議論される問題に、玄米が熱性か寒性かということがあります。

これも食べる人の胃腸の状況によって一概には言えないのが実際で、胃腸の丈夫な人は問題ありませんが、胃腸の弱い人が食べれば消化が難しい為、臓器を冷やすことになり、結果として寒性を示すことになります。

これらの陰陽分類によって食事の内容を考えることは、それなりに有益な点もあり、特定の疾病を抱えた方の場合、積極的に摂ると良い食事や、逆に食べないほうが回復を早める食べ物などを自らの体質に合わせて考えることができるのですが、一般の方は参考程度にし、常に陰陽一覧表を見ながら、神経質に献立を決めるような愚をおかさないようにして頂きたいと思います。

それに今日の食物の凄まじいまでの汚染・劣悪化を考えると、もはや食品を陰か陽かで見分けるのではなく、無害か有害かで判断すべきであるといえます。

2007/02/05

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