食欲中枢の汚染

「食べて美味しいと思うものや、食べたくなるものは体が要求しているわけだから、好きでもないものを健康に良いからと無理に食べるのは良くない。美味しいと思うものを食べればよい」

こんな意見を時々耳にします。

確かに、本来「健康」ということを考えれば、「食べたいと思ったときに食べたいものを食べればよい」というのは食の真実であり、まったくその通りです。

本来、人間に限らず、あらゆる動物の食の本能は、それにまかせていれば正しい食事ができるようになっています。

人間が、自然の理に逆らわずに生きていた頃には、当然、食の選択というある種の贅沢もできなかったこともあり、食の本能に従った食生活ができていたといえます(飢饉や、病など一概に古き良き時代ともいえませんが)。

しかし、今日の人々を取り巻く環境は加速度的に悪化しており、それは食の世界にも波及して、農薬や様々な食品添加物、味の濃い調味料、料理の必需品とばかりに大量に消費される砂糖などによって、私たちの食欲中枢は完全に汚染されており、本能のおもむくままの食生活をしていれば、健康をそこなうことは自明です。

糖尿病をはじめとする多くの成人病患者は、まさにそのようにして出来上がったと言えるでしょう。

現代人の生活は体の感性を低下させます。

視覚、聴覚、嗅覚、触覚、そして当然味覚も現代の環境汚染の影響を受けることになります。

いったん濃い味付けに慣れてしまうと、薄味の食事では満足できなくなり、食材の本来の旨みを感じられなくなってしまいます。

数年前に「芸能人格付けチェック」という人気番組がありましたが、自身も料理を趣味とし、食通で通っていたある芸能人は、食べ比べでザリガニと伊勢海老の違いすら分からず、失笑を買いました。

案外、自分の舌に自信がある人ほど、こんなものかもしれません。

また、調味料には麻薬的依存性のあるものがたくさんあります。

砂糖などは、その最たる例でしょう。

料理の必需品として、当たり前のように消費され続ける砂糖は、ケーキや、各種お菓子類など様々な嗜好品に使われていて、それらの嗜好品が大好きでたまらないという人が大勢いますが、これらはどう考えても食の本能とはかけ離れたものと言えるでしょう。

酒飲みは体を壊しても「わかっちゃいるけどやめられない」で死ぬまで飲み続ける人が少なくありませんし、喫煙者がタバコをやめられないのも同様でしょう。

以上のように、「体が必要としているから」と、好みに任せて食べ続けるのは、自分の手で自分の首を絞めるようなものです。

比較的健康な人は兎も角として、時既に遅しで体を悪くしてしまった人は、厳格な食事制限の必要があるのです。

また、現代人は山奥で自給自足の浮世離れした生活をしている仙人もどきの人を除いて、ほとんど全員が食欲中枢が汚染されており、ある程度は、食養の知識を身につけ、自制心をもった食生活を続けるのが、良いと思います。

そして、体が要求しているのは、必ずしも「美味しいもの」とは言えません。

例えば、アミノ酸は旨み成分などと言われますが、必須アミノ酸には味のないものがありますし(例えばリジン)、栄養上必須であるタンパク質も、それ自体はほとんど味のないものです。

「味が良いから」とか「食べたいから」という理由だけで、見境なく食べまくるのは、そろそろ止めにしませんか?

2007/02/16

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