土と水の自然学 内水護 著

1980年代に畜産排水処理の分野で注目を集めた(といっても知る人ぞ知る存在でしょうが)内水式自然浄化法リアクターの発案者・内水護博士の著書です。

東京大学で火山学を学んだ内水博士は、1980年代の初頭、土壌生成に関する画期的な発見をします。

内水博士によれば、我々は土壌について、何ら正しい知見を持ち合わせていないということです。

土壌とは、土壌微生物群の代謝経路がフェノール乃至フェノール露出基を含む代謝物を産出するように誘導されることで生じる有機物高分子化の産物であり、土壌菌群が該代謝経路に誘導されることで、本来の自然の浄化が惹起進行するのであり、かかる浄化が行われる時には、悪臭は発生せず、処理された水は土壌菌群由来の自然の抗菌性を有し、その水を摂取することは、土壌菌群と共生関係にある多くの動植物にとって有益だとのことです。

内水博士は、いわゆる生物活性水の分野のパイオニア的存在で、EM菌がブームになるずっと以前から、有用微生物にスポットを当てた活動をされていました。

内水理論の真偽は兎も角として、この本を無条件にオススメしたいのは、内水博士の文章の根底に流れる自然への憧憬と愛情が、読み手の心を捉えて余すところが無いからです。

文体は簡にして要を得た名文で、この文章を読むだけでも何だか得した気分にさせられます。

以前紹介しましたが、水を本当に勉強しようと思うなら、土と微生物を避けて通ることは出来ません。

そのための参考書として、これ程の本は無いように思います。

巷に溢れるこの手の有用微生物関連の本は、特定の微生物資材(たいていEM菌絡み)の宣伝とセットになっていますが、内水本は自然界の普遍的な浄化作用及びその原理を明らかにしようという試みがなされていて上品な印象を受けます。

その後、内水博士は病気を患われ、長い闘病生活の末、2005年に惜しくも他界されています。

広くオススメしたい書籍ですが、現在、内水博士の著作は入手困難で、中々容易に手にすることが出来ないのは残念です。

東京の農文協図書館には全冊所蔵されていますので、どうしても読んでみたい方は、そちらを利用されると良いでしょう。

内水博士には、本書の他に『土の心 土の文化』『蘊奥自然学』などの著作がありますが、重複も多いため、一番土壌生成理論について詳述されている本書をご紹介することにしました。

ただ、『自然と輪廻』は、足尾鉱毒問題を扱った大変な名著であり、心の琴線に触れるという点では本書以上の名著であって、個人的には大好きな本です。

こちらもご縁がありましたら是非一読されると良いでしょう。

2007/05/30

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