水とはなにか 上平恒 著

水に関する本は、本当に沢山出版されており、将に馬に食わせる程の数が出回っています。

しかし、その多くは浄水器や活水器のパンフレットを分厚くしただけの低俗な内容であり、論述の粗さは致し方ないにしても、あまりの非科学的な記述に、読んでいて腹が立って来るものさえ少なくありません。

そんな中、一際光り輝く存在が、この上平恒先生の名著『水とはなにか』です。

本書は、1977年の初版以来、版を重ね続けてきたロングセラーであり、良著揃いの講談社ブルーバックスシリーズの中でも、とりわけ多くの読者に愛されてきた名著なのです。

僅か200ページに満たない新書版ながら、中身の濃さは外見からは想像も出来ない程で、巷に出回っている水の本を100冊読むなら、本書『水とはなにか』を10回通読する方が、はるかに力が付くでしょう。

もっとも、巷に出回っている水の本を100冊も読むのは有害無益極まりない愚行でしょうけれど・・・。

古い本ですが、内容の正確さは、現代の読者が読んでも何の遜色もありません。

ということは、この本には水についての基礎がみっちり詰まっていると言えるでしょう。

本書を読んでつくづく思うのは、入門書というのは、その学問を究めきった真の碩学にしか書けないものだということです。入門書や啓蒙書など、素人が読んで分かるように書くのだから簡単だろうと思うのは素人考えそのもので、素人が読んで、その学問の面白さや感動を伝えきれるような本を書くというのは大変な大仕事であって、凡庸な学者には到底不可能なことなのです。

例えば、歴史書でいえば、通史がそれに当りますが、通史を書けるような学者はざらにいるものではなく、歴史の流れを描き切り、美しい織物を編むように一冊の本に仕立て上げるのは、本物の碩学を除いて誰が為し得る仕事でしょうか。

本書『水とはなにか』を読めば、上平先生が間違いなくそのような学者の一人であることがお分かりになるでしょう。

高校レベルの理科の知識が無いと難しく感じるかもしれませんが、何度も読むうちに少しずつ頭に入ってくるはずです。

是非挫けずに挑戦して欲しいと思います。

2007/05/28

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